一人が抜けただけで回らない会社は、最初から回っていなかった

一人が抜けただけで回らない会社は、最初から回っていなかった 警備業界・零細企業

会社を辞めたあと、昔一緒に働いていた隊員と話す機会がありました。

そのとき、

「もうグダグダで、どうしようもない」

みたいなことを言われたんです。

もちろん、その隊員から見た範囲の話です。

会社全体が本当に崩壊していたのかどうかまでは知りません。

ただ、それを聞いたぼくは、

「まぁ、さもありなん」

と思いました。

そして正直に言うと、若干うれしかったですw

いや、会社がグダグダになったことがうれしかったわけではありません。

そこまで性格は悪くない……たぶんw

ぼくがうれしかったのは、

自分がやっていた細かい配慮を、ちゃんと感じ取ってくれていた隊員がいたんだな

と思えたからです。

人員配置って、空いてる穴に人を入れるだけじゃない

警備会社の人員配置というと、

「明日の現場が10件あるから、隊員を10人入れる」

みたいな仕事に見えるかもしれません。

まあ、表だけ見ればそうです。

でも実際にやっていると、そんな単純じゃない。

ぼくがかなり気にしていたのが、隊員と現場監督との相性でした。

たとえば、ある監督が特定の隊員をかわいがってくれている。

だったら、できる範囲でその隊員をその監督の現場へ入れる。

隊員は気分よく働ける。

監督側も、馴染みのある隊員が来るので仕事を頼みやすい。

その隊員がちゃんと仕事をすれば、会社の評価も上がる。

これ、地味なんですけど結構大きい。

隊員、お客さん、会社。

三方よしです。

まあ、そんなきれいに毎回ハマれば苦労しないんですけどw

人が足りない。

現場が遠い。

本人がその日は無理。

この隊員とこの監督は合わない。

あっちは早朝。

こっちは夜勤明け。

いろいろあります。

その中で、できるだけマシな組み合わせを探していく。

人を現場に置いていたというより、人間関係まで含めて配置していた。

今振り返ると、ぼくがやっていたのはそっちに近かったと思います。

でも、そんなの引き継ぎ書に全部書けるわけがない

会社を辞めるとき、後任になった若い担当者には最低限の引き継ぎをしました。

ただ、

「A監督はB隊員を気に入っている」

と書いたところで、それで全部伝わるかというと、そんなわけないんです。

なぜその監督がその隊員を気に入っているのか。

以前どんな現場で一緒だったのか。

隊員本人はその監督をどう思っているのか。

その監督は何を嫌がるのか。

隊員は何を嫌がるのか。

そんなものは、毎日の電話とか雑談とかクレームとか、現場から返ってくる反応の中で少しずつ溜まっていきます。

マニュアルの外側にある情報です。

ぼくの頭の中にはたぶん、

隊員名簿とは別に、人間関係の地図みたいなものがあった。

ただし。

その地図、ぼくの頭の中にしかありませんでしたw

そりゃ辞めたら消えます。

「あの人がいないと回らない」は、あんまり褒め言葉じゃない

会社にいると、

「あの人がいないと困る」

と言われるのって、ちょっとうれしいんですよね。

必要とされてる感じがする。

ぼく自身も、そういう感覚はあったと思います。

でも今振り返ると、

一人抜けただけでガタガタになるなら、その人がすごいというより、会社の作りが危うい。

たぶん、こっちです。

ぼくが抱えていた情報を、会社として共有できる形にしていなかった。

会社側も、それを特に仕組みにしようとはしていなかった。

で、担当が変わったら、

「なんか前と違う」

となる。

当たり前っちゃ当たり前です。

仕事の手順だけ渡しても、

その人が何を見て判断していたのか

までは簡単にコピーできません。

それでも「グダグダ」と聞いて、ちょっとニヤッとしたw

とはいえですよ。

辞めたあとに、

「グダグダになった」

と聞いて、

「やっぱりな」

と思ったのは事実です。

ちょっとニヤッともしましたw

これはもうしょうがない。

長いことやってきて、自分なりに隊員のことを考えて配置していた。

でも、そういう仕事って数字には出ません。

「今日も配置完了しました」

で終わりです。

誰と誰を組ませたか。

なぜその人をそこへ入れたか。

その結果、隊員が気持ちよく働けたか。

お客さんから会社の評価が上がったか。

そんなもの、売上表にはほぼ出てこない。

だからこそ、

「前の方がよかった」

みたいなニュアンスを隊員から感じたとき、

ああ、見てる人は見てたんやな

と思ったんです。

それが、ちょっとうれしかった。

まあ、それと会社がちゃんと回るかどうかは別問題なんですけどw

仕事を引き継ぐなら「作業」より「判断」を見た方がいい

属人化の話になると、

「マニュアル化しましょう」

「誰でもできるようにしましょう」

という話になりがちです。

もちろん、それは必要です。

でも、それだけでは足りない仕事もある。

この人は何を嫌がるのか。

このお客さんは何を大事にしているのか。

誰と誰ならうまくいくのか。

逆に、誰と誰は組ませない方がいいのか。

そういう文脈です。

そして、厄介なことに、

仕事を本当に回しているのは、案外こっちだったりします。

だから、

「あの人がいないと回らない」

という人がいたら、

「あの人は優秀だな」

で終わらせない方がいい。

その人は何を見て、どう判断しているのか。

そこを拾わないと、引き継いだつもりでも、たぶん半分しか引き継げていません。

ぼくの場合、それに気づいたのは辞めたあとでした。

……まあ、辞める頃のぼくは、

「会社の属人化を解消しよう!」

なんて考える余裕はなかったですけどね。

自分が会社から脱属人化するので精いっぱいでしたw

この記事を書いた人
福本 幸一

首都圏の零細警備会社に約30年勤務。現場の警備員から管制・人員配置・採用・教育・クレーム対応まで一通り担当しました。退職後はChatGPTやClaude Codeなどを使い、自分の経験や文体をObsidianに蓄積して活用する「外部知能」作りを実験中。タルムードなど古今の知恵も好きです。

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