土曜の昼、スマホが鳴る。
警備員からの定時連絡。
「異常なし、これより場内巡回に入ります」
それだけなら数十秒で終わる。
でも異常があれば、そのまま対応が始まる。
日曜も同じ。
祝日も同じ。
「休日でもたまに電話が来る」くらいなら、まあ、そういう会社もあると思うんです。
でもぼくの場合はちょっと違った。
土日祝であっても、警備員から定時連絡そのものが普通に入ってくる。
つまり、
「今日は休みだけど、運が悪ければ電話が鳴る」
じゃないんですよ。
最初から鳴るんですw
そして応じなきゃいけない。
カレンダー上では休みでも、業務上のやり取りが発生する日として最初から組み込まれている。
特に管制のサブをやっていた人間が飛んでから、ぼくが会社を辞めるまでの約1年半。
この期間については、
「今日は仕事と完全に切り離されている」
と言える日は、本当に一日もなかったです。
改めて文字にすると、だいぶ変な生活してますねw
「毎日全力でした」で乗り切れる期間には限度がある
以前、自分のことを冗談半分で「超越者」って名乗ったことがあります。
あらゆる業務をこなして、休みもなく、毎日全力を厭わず働き続ける。
そのうち、普通なら音を上げそうなハードモードでも平然と仕事する人間になっていた。
それを自虐なのか自慢なのかよく分からない感じで、
「超越者」
とか言ってたんです。
当時は割とカッコいいと思ってました。
今見ると、
いや「毎日全力」の時点でもう設定がおかしいやろw
と思います。
そもそも毎日100%で走れる人間なんていないです。
いたとしても長くは保たない。
ぼくが30年近く警備業界にいられた理由も、「毎日100%だったから」ではなかった。
むしろ逆です。
今振り返れば、
全力を出す場所をかなり絞っていた。
普段の仕事の8割くらいは、体感でいえば6割くらいの力で流していました。
管制の電話対応。
日々のシフト調整。
書類のやり取り。
長くやっていると、このへんは大体パターンが見えてくる。
毎回、
「うおおおおお! シフト調整するぞおおお!!!」
なんてやってられませんw
普通に処理する。
必要なことをやる。
終わり。
全部フルスロットルでやっていたら、本当に重要なことが起きる前にこっちの電池が切れます。
唯一、絶対に力を抜かなかった場所
じゃあ、何に対しては6割じゃダメだったのか。
これははっきりしています。
現場に穴を開けること。
ここだけは別格でした。
警備の現場では、契約や警備計画、現場の条件などに応じて必要な配置人数が決まっています。
必要な人数を確保できなければ、現場に直接影響する。
だから、
「明日3人必要だけど2人しかいません」
は、
「書類がまだ整理できてません」
とは話の次元が違うんです。
それはヤバいやつです。
なので普段は6割運転でも、ここだけは毎日必ず確認していました。
- 翌日の現場数
- 必要人数
- 欠員の有無
- 配置状況
地味です。
ものすごく地味です。
何事もなければ、誰からも褒められません。
だって翌朝、必要な人数が普通に現場にいるだけだから。
でも、それでいい。
何も起きない状態を作るのが、この仕事では成功だった。
逆にここを一回飛ばしたせいで現場に人がいなかったら、一気に大騒ぎになる。
だから他が多少雑でも、ここだけは外さない。
求人関係の書類とか、社内向けの報告とか、
「いや、これ今日じゃなくても地球は回るよね?」
という仕事は山ほどあります。
そういうものまで現場の欠員と同じ緊張感で扱う必要はない。
というか、扱ってたら保ちません。
できる人ほど仕事が増える。だから全部100%なんて土台無理
以前、
「警備会社に30年いて分かった、『できる人ほど仕事が増える』零細企業の地獄」
という記事を書きました。
零細企業だと、できる人のところに仕事がどんどん集まります。
管制。
人員配置。
採用面接。
クレーム対応。
営業。
気づけば、
全部入り福本セット
みたいになっている。
「いや、いつぼくの仕事になったん??w」
って何回思ったか分かりません。
で、この状態で積み上がった仕事全部を100%でやろうとしたらどうなるか。
簡単です。
詰みます。
いや無理ですよw
1日は24時間しかない。
突然ぼくだけ32時間になるわけじゃないんだから。
だから「仕事を全部同じ重要度で扱わない」というのは、格好いい仕事術でもなんでもなく、ほぼ生存戦略でした。
全部に気を張っていたら、本当に気を張るべき場所で使う体力が残らない。
現場に穴を開けない。
そこに力を残しておくために、それ以外ではあえて全力を出さない。
当時はそこまで理屈で考えていたわけじゃないです。
でも今振り返ると、結果としてそういう配分になっていました。
自分が抜けたあと、3.5人でやってた
これ、けっこう象徴的な話なんです。
会社を離れたあと、前の取引先経由で聞きました。
ぼくがやっていた仕事を、
3.5人で分担することになったらしい。
3人じゃないですよ。
3.5人。
なんやねん0.5人てw
土日の連絡は外注へ転送。
月曜の出社も9時前。
それを聞いた当時、
「ずいぶん待遇いいよな〜w」
みたいなことをつぶやいた記憶があります。
でも、これを冷静に考えるとけっこう変な話で。
ぼく一人がやっていた仕事を分解していったら、3.5人で回す形になったということです。
で、そのぼく本人はどうしていたかというと、
かなりの部分を6割運転で処理していた。
そりゃそうなんです。
3.5人分を全部100%でやれるわけないんだからw
もちろん、ぼくの6割運転がすべて完璧だったなんて言うつもりはありません。
「あれ、本当にちゃんと回ってたんかな?」
と思うところは今でもあります。
ただ、一つだけは言えます。
現場に穴を開けるという、一番マズいところだけは最後まで一度も外さなかった。
そこだけは自分の中で明確に優先順位が違いました。
仕事を「全部同じ扱い」にしないという判断力
30年近く仕事をしてきて、仕事ってだいたいこう分かれると思っています。
- 絶対に失敗できない仕事
- 多少遅れても問題ない仕事
- 80点で十分な仕事
- そもそも今それ、やる必要あるんか?という仕事
ぼくの場合、
「絶対に失敗できない仕事」
の代表が現場の欠員対応でした。
一方、書類整理なんかは多少あとでもいい。
ルーティンの業務なら、毎回120点を狙う必要もない。
そして会社にはなぜか、
「これ誰のためにやってるん?」
みたいな仕事も生まれますw
全部を同じ熱量で扱っていたら、絶対に息切れする。
それどころか、一番怖いのは、
全部に100%を出そうとして、本当に100%が必要な仕事で力尽きることです。
本末転倒にもほどがある。
だから仕事力って、
「全部ちゃんとやれる能力」
だけじゃないと思うんです。
どこを流して、どこだけは絶対に外さないかを判断する能力。
これもかなり大事です。
少なくとも、ぼくがいたような零細企業では、それができないと普通に保たない。
6割運転でも、休みが生まれたわけじゃない
念のため最後に書いておくと、
6割運転を覚えたから楽勝でした!
という話ではありません。
そんなわけあるかw
管制のサブが飛んでから退職するまでの約1年半、土日も定時連絡は続きました。
応じる必要がある。
何かあれば、そのまま対応する。
だからその期間、
仕事から完全に切り離された日は一日もなかった。
でも、だからこそ全部を100%で受けるわけにはいかなかったんです。
普段は6割で流す。
流して問題ないものは流す。
そして、本当に外してはいけないところにだけ力を残しておく。
「仕事は常に全力で」
という言葉は、まあ聞こえはいいです。
でも仕事って、一日で終わらない。
一週間でも終わらない。
何年も続く。
ぼくの場合は30年近く続きました。
だったら必要なのは、
毎日100%を出すことじゃない。
今日、絶対に外してはいけないものは何なのか。
それを見失わないことです。
仕事を全部100%でやらなくていい。
むしろ全部100%でやろうとする方が危ない。
ぼくは普段6割くらいで流していました。
その代わり、
現場に穴だけは開けない。
そこだけは最後まで外さなかった。
30年近く働いて身についた処世術としては、案外これが一番実用的だったのかもしれません。


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