生活保護を受けていた人も、何百人も部下を持っていた人も来た。警備会社で30年、人を見てきた話

生活保護を受けていた人も、何百人も部下を持っていた人も来た。警備会社で30年、人を見てきた話 警備業界・零細企業

警備員になること自体に、特別な免許や資格はいらない。

もちろん法律上、警備員になれないケースはあるけど、基本的にはかなり入口の広い仕事だ。

ただし、「警備員になろう」と思ったその日に現場へ出られるわけではない。警備員として働く前には法定の新任教育があって、うちではだいたい3日ほどかけていた。

だから、「食い詰めた。今日から警備員やって日払いで稼ごう!」と思っても、少なくともうちの場合は、研修を受けて現場へ出るまでに数日のタイムラグがある。

入口は広いけど、完全な即金仕事というわけでもない。

そんな仕事を30年近くやってきて、本当にいろんな人と一緒に働いてきた。

生活保護を受けていた人もいた。警備会社を転々と渡り歩く人もいた。ダブルワークで空いている日だけバイトに来る人もいた。

研修を全部受けて、現場初日にバックレる人もいた。

これが何をしたかったのか、一番わからんw
会社も本人も、互いに時間の無駄すぎる。

かと思えば、大企業で何百人という部下を持っていた人が、退職後に警備員として働きに来ることもあった。

前職も、それまでの人生も、まったく違う人たちが、同じ制服を着て同じように現場に立つ。

警備会社というのは、そういう場所だった。

警備員は入口が広い。でも、続くかどうかは別

ただ、ここでひとつ言っておきたいことがある。

入口が広いことと、誰でも続けられることは、全然別の話だ。

生活保護を受けながら、うちで働いていた人もいる。

入札で取る現場は、どうしても価格との勝負になる。安く受注すれば、それだけ人件費にも余裕がなくなる。

会社としては限られた予算の中で現場を回さなければならないし、働く側にもそれぞれ事情がある。

ぼくは長くこの仕事をしてきたけど、人件費をギリギリまで詰めながら現場を回すようなやり方には、ずっと違和感があった。

このへんの話は掘り始めると長くなるので、また別の記事で書こうと思う。

交通誘導では続かなくても、施設警備なら定着する人もいた

警備員とひとことで言っても、仕事の中身はけっこう違う。

ここでいう2号警備は交通誘導の話で、道路に立って車や歩行者を誘導するような仕事だ。

今日はこの現場、明日は別の現場、次の日はまた違う現場、ということも珍しくない。

しかも基本的に屋外。

暑い日は暑いし、寒い日は寒い。雨でも、現場が動くなら仕事はある。

正直、タイヘン。

一方、ここでいう1号警備は施設警備の話だ。

施設に常駐して警備する仕事で、巡回などを除けば屋内で過ごす時間も多い。現場にもよるけど、空調があるところも多いし、仕事に慣れてしまえば毎日の流れもある程度決まってくる。

同じ警備員でも、負荷のかかり方はかなり違う。

ぼくの見てきた範囲では、生活保護を受けていた人が交通誘導に入っても、長く続かないケースが多かった。

まもなく来なくなる人も、かなりいた。

ただ、施設警備に入ると、そのまま定着する人もいた。

もちろん全員ではない。

でも、交通誘導では続かなかった人が、施設警備なら続くということは実際にあった。

何百人も部下を持っていた人が、75歳くらいまで働いた

もうひとつ、対照的な人がいる。

大企業で何百人も部下を持っていたという人が、退職後にうちへ来たことがある。

前の会社では、数百人の社員の前でスピーチをしたり、人事をうまく差配して現場の士気を上げ、生産性を改善したりしていたらしい。

そんな話を、ときどき聞かせてくれた。

多分、定年後にずっと遊んでいるのもどうかな、と思ったんじゃないかと思う。

これはぼくの想像でしかないけど。

その人は、拘束時間の短い施設警備の現場に入って、75歳くらいまで働いた。

頭も切れるし、すごくバランスのいい人だった印象がある。

だからといって、「前の会社ではこうだった」と昔の肩書きを鼻にかけるようなこともなかった。

警備会社に来れば、そこでは一人の警備員だ。

ほかの隊員とも普通に協調して、うまくやっていた。

だから周りからも慕われていたし、信頼されていた。

何百人もの部下を持っていた人が、退職後は一警備員として現場に入り、周りと普通にやりながら75歳くらいまで働く。

警備会社にいると、こういう人にも出会う。

「使える上澄み」で現場を回してきた30年

30年やってきた実感として、最初から使える人材が次々に来るような業界ではなかった。

その中の「使える上澄み」を使って、なんとか現場を回す。

言い方は悪いけど、ぼくにはそんな業界に見えていた。

一方で、過去の経歴だけを見ても分からない。

生活保護を受けていた人の中にも、施設警備に入ってちゃんと続いた人はいた。

大企業で何百人も部下を持っていた人も、退職後に施設警備へ入り、75歳くらいまで働いた。

警備会社には、本当にいろんな経歴の人が来る。

入口は広い。

でも、入ることと続けることは、まったく別の話だった。


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この記事を書いた人
福本 幸一

首都圏の零細警備会社に約30年勤務。現場の警備員から管制・人員配置・採用・教育・クレーム対応まで一通り担当しました。退職後はChatGPTやClaude Codeなどを使い、自分の経験や文体をObsidianに蓄積して活用する「外部知能」作りを実験中。タルムードなど古今の知恵も好きです。

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