仕事ができる警備員は、最初にどこを見るのか? 30年現場を見てわかった「差」

警備業界・零細企業

警備員を長く見ていると、

「この人、できるな」

というのは、わりと早い段階でわかる。

別に、誘導灯を振る動きがキレッキレだからとか、声がデカいからとか、そんな話じゃない。

もっと手前。

何を見ているか。

ここが違う。

以前Xに、

交通だと現場を一瞥して最も危険な場所をまずケアする人、片交だと「流して良い」の合図が絶妙な人

と書いたことがある。

30年近く警備会社にいて、現場にも出て、人を配置する側もやってきたけど、結局これなんだと思う。

できる警備員は、言われた場所に立ってから仕事を始めるんじゃない。

現場に着いた瞬間から、もう仕事が始まっている。

現場に着いたら、まず「危ないところ」を見る

たとえば道路工事の現場。

車が来る。

歩行者がいる。

自転車も来る。

工事車両が出入りする。

交差点がある。

信号がある。

全部同時に見る必要がある。

でも、その中でも危険度は同じじゃない。

「あそこ、車が死角から出てくるな」

「ここで歩行者と工事車両の動線がぶつかる」

「この位置に立ったら自分が逃げられない」

そういうところを先に見る。

できる人は、とりあえず指定位置に立ってから考えない。

まず現場を見て、一番危ないところを探す。

逆に怖いのは、

「ここに立ってください」

と言われたから、何も考えず本当にそこへ立つ人。

いや、そこ危なくね??

となることがある。

警備って、決められた場所で決められた動きをする仕事に見えるけど、実際の現場は毎回違う。

同じ道路でも、交通量が違う。

天気が違う。

工事の進み方が違う。

人も違う。

だから最初に必要なのは、

その日の現場を自分の目で見ること。

ここでかなり差が出る。

片側交互通行は、「止める仕事」じゃない

交通誘導で特に実力差が出るのが、片側交互通行、いわゆる片交だと思う。

片方を止めて、反対側を流す。

一見すると、それだけ。

でも実際やると全然違う。

何台流すか。

どのタイミングで止めるか。

対向側に残っている車はないか。

信号が変わるタイミングはどうか。

後ろにどれくらい溜まっているか。

相方がこちらの意図を理解しているか。

ずっと見ながら調整する。

以前、若い隊員と一日片交をしたあと、

「めちゃくちゃやり易いですね」

と、ちょっと引き気味に言われたことがあるw

その日は交通量を見ながら、先に流す側、あとから流す側をその都度変えて、できるだけ車を待たせないようにしていた。

ぼくの中では普通にやっていたことだった。

でも、片交は相方次第で本当にストレスが変わる。

こちらの車列が伸びているのに、

延々と自分の方の車を流し続けるヤツ。

信号の時間を考えずに流れを切れないヤツ。

片交では、止めるタイミングを制した者が神。

安全は絶対に必要。

でも、

安全に、できるだけスムーズに、できるだけ多く流す。

そこまで考えるのが片交だと思っている。

だから「流して良い」の合図ひとつでも、上手い人とそうでない人で差が出る。

車から目を切るな

交通誘導で、ぼくがかなり強く思っていることがある。

道路に出ている限り、車から目線を切らない。

これはもう癖になっている。

停止の合図を出した。

運転手もこっちを見た。

車も止まりそう。

だから大丈夫。

……とは限らない。

昔なら、警備員と運転手の間である程度「阿吽の呼吸」みたいなものが成立していた場面でも、今は突然予想外の動きをする車もある。

停止したと思った車が突然動く。

こっちを見ているのに、そのまま来る。

「普通こうするだろう」

が通用しない。

だから見る。

最後まで見る。

ぼくは以前、交通誘導中の警備員が車にはねられた事故の記事を見て、

「道路に出ている限り絶対に車から目線を切ってはいけない」

と書いた。

見ていれば、全部避けられる。

そんなことまでは言わない。

でも少なくとも、見ていなければ避けられるものまで避けられない。

警備員は車を止める権力者じゃない。

赤旗を出したら、世界中の車が必ず止まってくれるわけでもない。

ここを勘違いすると危ない。

「誘導が上手い」より、その先を見ている

ぼくは昔、

「個人的に自分は世界で一番バック誘導がうまい」

とXに書いたことがある。

我ながら大きく出たなw

でも、今でもバック誘導にはかなり自信がある。

ただ、それと同時に書いたのが、

警備員を完全に信用して運転してはいけない

ということだった。

警備員も人間なので、見落とす。

判断を間違える。

死角もある。

最終的にハンドルを握っているのは運転手だ。

逆に警備員側も、

「俺が誘導してるから大丈夫」

ではダメだと思っている。

後ろを見る。

車体を見る。

周りを見る。

歩行者を見る。

運転手がこちらの合図を理解しているか見る。

つまり、上手い誘導というのは、

誘導灯をどう振るかより、その結果何が起きるかを見ている。

こっちの方が大事だと思う。

現場に着いてからの動きでも、だいたい分かる

管制をやっていたころ、

「この人、現場で大丈夫かな?」

を見る機会が山ほどあった。

そこで面白いのが、

現場に着いて、着替えて、仕事を始められる状態になるまでを見ると、だいたい分かる

ということ。

到着する。

誰に声をかければいいか確認する。

現場の位置を見る。

装備を整える。

必要なことを聞く。

仕事に入る。

こういう一連の動きがスムーズな人は、現場でもだいたい自分で考えて動ける。

逆に、

「どこ行けばいいですか?」

「何すればいいですか?」

「これどうするんですか?」

と、一個動くたびに全部聞かないと進まない人は、現場でも同じことになりやすい。

もちろん初めての現場なら聞けばいい。

分からないことを勝手にやる方が危ない。

でも、

何を確認すべきか自分で考えられる人と、全部指示されるまで止まっている人は違う。

この差は大きい。

結局、「次に何が起きるか」を見ている

こうして振り返ると、仕事ができる警備員って、

特別な技をたくさん持っている人というより、

今起きていることの一個先を見ている人

なんだと思う。

車が来たから止める。

ではなく、

この車をここで止めたら、その後どう流れるかを見る。

歩行者が来たから誘導する。

ではなく、

この人が進んだ先で工事車両とぶつからないかを見る。

現場に立てと言われた。

ではなく、

そこに立ったら何が危ないかを見る。

たぶんこれが、ぼくが長いこと警備員を見てきて感じた一番大きな差だ。

警備って、事故が起きなかった日は、

「何も起きなかった一日」

に見える。

でも、本当にいい警備員は、

何も起きなかったんじゃない。

何か起きそうなものを先に見つけて、何も起きない方へ少しずつ動かしている。

そういう仕事なんだと思う。

だから、

「仕事ができる警備員は何が違う?」

と聞かれたら、ぼくはこう答える。

目の前を見ているんじゃない。その次を見ている。

そこが一番の差だと思っている。

この記事を書いた人
福本 幸一

首都圏の零細警備会社に約30年勤務。現場の警備員から管制・人員配置・採用・教育・クレーム対応まで一通り担当しました。退職後はChatGPTやClaude Codeなどを使い、自分の経験や文体をObsidianに蓄積して活用する「外部知能」作りを実験中。タルムードなど古今の知恵も好きです。

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